最近のいただきもの

帰国してからこの間いくつかご著書を頂いておりました。まず遅くなってしまいましたが,夏休みのうちに河野勝先生から,監修をされている「ポリティカル・サイエンス・クラシックス」シリーズのうち,『国力と外国貿易の構造』『通産省と日本の奇跡』に二冊を頂いておりました。どうもありがとうございます。二冊とも,言わずとしれた名著で,再翻訳は喜ばしいことです(前者はちょっと前に出ているものですが)。 『通産省と日本の奇跡』の方の翻訳を担当された佐々田さんはもうすぐ同じ勁草書房から農政についての研究書を出されるということでこちらも楽しみです。

国力と外国貿易の構造 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)

国力と外国貿易の構造 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)

 
通産省と日本の奇跡: 産業政策の発展1925-1975 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)

通産省と日本の奇跡: 産業政策の発展1925-1975 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)

 

 同じ早稲田大学の稲継裕昭先生からは『AIで変わる自治体業務』を頂きました。ありがとうございます。稲継先生は最近『未来政府』を訳されるなど(これも非常に面白い本でした!),情報通信技術がいかに我々の生活や自治体の業務を変えるかという研究に精力的に取り組まれています。この本では特にAIに注目されていて,それが将来的に自治体業務をどう変えていくかも含めて議論されています。 

AIで変わる自治体業務―残る仕事、求められる人材

AIで変わる自治体業務―残る仕事、求められる人材

 
未来政府

未来政府

 

東京大学宇野重規先生からは『未来をはじめる-「人と一緒にいること」の政治学』を頂きました。ありがとうございます。宇野先生が豊島岡女子女子中学・高校で政治学の講義をした記録をもとにしたご著書ということです。「知識主導型でない政治学の講義」という企画なので,政治学って難しそうと思う人にも手に取りやすいものになっていると思います。リンク先での宇野先生のコメントとして,

 とは言っても、なかなか政治を身近に感じることは容易ではないだろう。政治とは多様な人々が集まって意思決定をすることだ、といくら解説したところで、「集合的意思決定」などという言葉を使った瞬間、多くの人は「難しそう」、「自分とは縁のない話だ」と思ってしまう。

とあったのですが,そういえば,僕も先日高校生にお話したとき,ふつうに「政治ってのはみんなの行動を縛ることを決めることで…」とか言ってましたね。反省しきりです。

日野愛郎先生からは『内容分析の進め方-メディア・メッセージを読み解く』を頂きました。どうもありがとうございます。授業で使った内容分析のテキストを翻訳されたということです。日野さんはただでさえベルギーの政治に欧州を中心とした比較政治について日・英の両言語でたくさん発表され,普通の計量分析だけじゃなく質的比較分析(QCA)も使いこなすすごい研究者なのですが,さらに内容分析まで教えているという…無理そうですが本当に見習いたいと思います。実は僕も最近国会議事録を分析する仕事をしていて,そのときに機械学習を使った内容分析的なやつってやってみたいなあと思ったのですが,ちょっとハードル高くて諦めたところです…。まずは本書から勉強してみます。 

内容分析の進め方: メディア・メッセージを読み解く

内容分析の進め方: メディア・メッセージを読み解く

 

その国会議事録を分析する仕事を発表する版元の白水社から『英語原典で読む経済学史』を頂きました。ありがとうございます。正直なところ日々の仕事に追われていると経済学を原典で読むというのは相当ハードル高いですが,英語の勉強として(解説付きで)読む機会があると,読むこともできるかもしれませんね。 

英語原典で読む経済学史

英語原典で読む経済学史

 

もうひとつ,神戸大学の梶谷懐先生から『中国経済講義』を頂いておりました。どうもありがとうございます。本書を読むと,中国経済を理解するのにいかにそのための前提知識が必要なんだろうと感じます。英語中国語に加えて経済学の理論や実証の方法が必要なのはもちろん,中央地方関係をはじめとした政治制度や労働問題,最近だと情報技術についてまでの知識もいるでしょうから,参入のハードルは極めて高いなあと。しかし本書は新書であるにもかかわらず,本当に多様な論点に目配りされていて、まさにこれが現代中国経済の講義なのだなあと感じました。

個人的には,地方政府と土地取引の第2章が勉強になりました。中国の土地所有制度(というか社会主義なので所有じゃないわけですが)はちょっと変わっているということを耳学問では聞くものの,あまり体系的に知る機会はなく,地方政府が土地使用権を独占的に供給するということが市場に歪みをもたらすという話はなるほどなあと。ほっておくと地方政府が観察しにくいかたちで債務を増やすので,地方債の発行に置き換えていくというのもなかなかすごい話です(これはこれでそのうちToo big to failが起きそうな気もしますが…)。最後の不動産税のところは,日本でもそうですが,在外研究先のバンクーバーでもいわば「口に苦い良薬」として問題になっていた話で,やはり取りうる政策手段というのはある程度収斂してくるんだなあという印象を持ちました。

本書でも何度か言及されていましたが,いろいろと改革があってもソフトな予算制約の問題は依然として残るようですし,日本と同様に中国も持続可能な制度への転換という課題に直面しており,その経験を相互に参照することは重要になるのではないかと思うところです。