広島県知事選挙

今年の知事選は非常に興味深いものが多い。結局ほとんどのものはブログで何らかのコメントをした気がする。例外は,「1990年代型」の相乗り候補vs.共産系候補となった岐阜県知事選挙だけで*1,他については従来(2005年以前,というか)と違う対立構造が観察できる。この広島県知事選挙もまさにそういう感じ。時事通信の記事によれば,

◎5氏が届け出=広島知事選
任期満了に伴う広島県知事選は22日告示され、無所属で学習塾経営の川元康裕氏(42)、無所属で前県議の柴崎美智子氏(54)、共産公認で党県委員長の村上昭二氏(62)、無所属で元通信会社経営の湯崎英彦氏(44)、無所属で前県議の河井案里氏(36)の5新人が届け出た。投開票は11月8日。
民主、自民両党とも独自候補擁立を断念。民主県連は、連合広島と政策協定を結んだ湯崎氏を支援する。自民県連は自主投票を決めており、県議会の自民系は最大会派が湯崎氏を、第2会派の議員らが河井氏を支援する。国民新党代表の亀井静香金融・郵政改革担当相は河井氏を応援する。

現状では自民党系の最大会派と民主県連が支援した候補が優勢に見える。しかし対立すると目される自民党系の候補は,若い女性候補で,ここ最近の選挙の流れを見ると票を集めることができるかもしれない。対立の構図についてはいまのところよくわからない。前県議の河井候補者が広島市安佐南区の選出で,地域性があるのかと思ったところ,亀井大臣(6区,三次市庄原市など)が支援しているところをみると,必ずしも地域性でもないらしい…。と思ってたら,普通に想像がついたw。この候補者の配偶者は自民党国会議員河井克幸氏ということらしい。広島県はよく無所属議員が自民党現職に勝つところで分裂気味なのですが*2,河井克幸氏の方も3区(安佐南区を含む)で,以前に増原義剛氏(前自民党衆議院議員,2009年総選挙では落選)が無所属で出馬してきた2000年総選挙で落選し*3,その後コスタリカ方式ということになっている。この辺の対立が背景にある,ということなのではないか。しかし,夫婦で国会議員というのは必ずしも珍しくないが,夫が国会議員で妻が知事,ということが実現するとすれば,おそらくはじめてのケースであるように思われる。
分裂といえば,もはや多少旧聞に属するが,総選挙の直後に滋賀県議会の自民党が分裂している。

◎県議会・自民会派が分裂=衆院選敗北で−滋賀
滋賀県議会で最大会派の「自民党・湖翔クラブ」(19人)に所属の中堅・若手ら11人が7日、会派を離脱した。11人は別の会派と合流し新会派を結成、自民系が分裂する事態となった。衆院選では、同県内の全4小選挙区で自民候補が敗北しており、離脱した県議の一人は「従来の自民党のやり方では、県民の負託に応えられない」としている。(後略)
2009年9月7日時事通信

その後の時事通信の報道で,その原因は「感情のもつれ」という話があったが,重要なのは「感情のもつれ」で分裂する状態である,というところではないかと思われる。まさにこれから地方政治が再編成されようとしているのを非常に強く感じるわけですが,その分析にも力が入るところ。まずは博士論文がその分析の前提になるべきなので,早く出版の用意をしなくては。

*1:兵庫県知事選挙も構図は同じだが,投票率の上昇という興味深い現象が見られた。

*2:宣伝ですが,このあたりについて分析・展望した論文を,御厨貴編『変貌する日本政治−90年代以後「変革の時代」を読みとく』で近刊予定です。何と出版情報がもう出てた!

*3:ちなみに1996年もおなじ対決だったが,そのときは河井候補が勝利