自民党新会派(10/30修正)

今回は「分裂」なのかよくわからないところではありますが。時事通信の報道から。

◎自民系5人が新会派結成へ=大阪府議会
大阪府庁舎移転案の採決に関する会派間の調整方法に反発し、府議会最大会派の自民党府議団を離脱した浅田均議員ら5人は28日、新会派「自民党ローカルパーティー」を結成すると発表した。庁舎移転をめぐっては、今年春にも同府議団から6人が離脱しており、これで府議会の自民党系会派は3つとなった。5人は離党はしない。
新会派は、議会改革や地方分権の推進を目指すとしている。また、脱官僚政治を実現するため、橋下徹知事と連携する意向だ。
10月28日 時事通信

最近,広島県知事選挙とか,総選挙直後の滋賀県議会とか,地方における自民党の分裂についての動きが表面化しつつある中で,大阪でもまた分裂が起きた。「また」というのは,今年の4月にも一度自民党が分裂しているため。そのときに分裂したひとたちはWTC移転に賛成,ということで分裂したわけだが,今回の人たちはどうなんだろうか。ただいずれにしても「離党はしない」というのはなかなか興味深い。今回離党した人たちのリストが出たので,自民党会派から離脱した人たちの選挙区や当選回数を見てみる,4月の離脱では当選回数1−2回でみんな大阪市以外で,特に南の方の比較的ベッドタウン色の濃い地域の人たち(貝塚・吹田・松原・八尾・富田林・東大阪)だったのに対して,今回の離脱では大阪市が多いものの(北区・城東区平野区堺市中区泉大津市)当選回数はやはり1〜3回くらいと比較的若い。仮説を考えてみると,大阪府議会の特徴としては,大阪市堺市という二つの政令指定都市をもつ上に,それらにおける区が細分化されているために,他の都道府県に比べて選挙区あたりの定数が小さいというのが注目できるかなぁと*1。人数が多いほど,いわゆる「風」とは独立に自らの地盤を強くすることで当選することができる,言い換えると他の政治勢力からの独立性が高まると考えられますが,大阪府ではこの点が問題になるのではないか。大阪市内の1人区・2人区で戦わないといけない候補は知事の意向を無視することはできないために(対立候補を立てられると困る),自民党会派から離脱してまで知事に賛成するかもしれない。また,若手の場合は複数人区であっても当選回数を重ねて地盤を築いている候補とは違うので,知事を頼って自分の再選確率を上げたいというのはあるのかもしれません*2。まあこれは,1993年の自民党分裂の要因について分析した,Kato, Junko, 1998, "When the Party Breaks Up: Exit and Voice among Japanese Legislators," American Political Science Review, 92(4): 857-870.に非常に似てくるわけですが,これにCoattailが入るということになるかもしれません。だから例えば離脱とコメントにもあるWTCへの賛否・予算への賛否みたいなのを併せて順序変数を作って分析とかありえるのかも。
あと,大阪市長府議会に出てきて…というのが,大阪市区選出の議員にどのような影響を与えたのかはいまいちよくわかりませんが,議員と市長の関係というのも考えてもいいのかもしれません。しかし,「離党しない」中であともう一年半後に迫ってきた統一地方選挙では,お互いにどのような選挙戦略を取るのか。非常に目が離せないところ。

*1:例えば同じように政令市を二つもつ神奈川県・福岡県と比べてみると顕著。両県では政令市内の区で4人区とか5人区がありますが,大阪府では1人区・2人区が圧倒的に多い。

*2:例えば吹田は4人区,東大阪大阪府内最大の7人区。前回選挙は吹田は無投票で東大阪は次点との差が250票くらいで,四月に離脱したのは最下位当選者。