住基カード

今日は名古屋高裁で,石川県内の住民が県などを相手取り、住民基本台帳ネットワークの個人情報削除などを求めた訴訟の控訴審判決。ちょっと前に大阪高裁で住民からの請求を棄却した地裁判決を変更して控訴認容し,その後に判決を下した裁判長が自殺する,というなんか謎めいた話があった事件(因果関係は不明)。今回の場合は,一審の地裁判決で住民側の請求が認容されたので,控訴しているのは石川県などだ,ということだそうですが。プライバシー権,とはいうものの,住民基本台帳ネットワークに保存される情報は氏名・性別・生年月日・住所だけなので,それに「プライバシー権」を感じて訴訟を起こす感覚は僕には理解できませんが,やっぱりそれは将来加速度的に「プライバシー権」が侵害されるのを水際で防ごうとかそういう高尚なお考えなのかもしれません。似たような話で「納税者番号」があるけど,そういう人たちは納税者番号制にも反対なんだろうなあ。納税者番号を入れることで,明らかに徴税コストが変わってくると思うんだけど,反対する人たちはその分余分に税金負担してくれたりはしないのかしらん。もっとも,納税者番号を入れても徴税コストが変わらなかったり,申告が透明化する効果が薄かったりすると反対したくなるとは思いますが。まあいずれにしても「名寄せ」による効率化を狙ってるわけで,それができるようになるとコントロールされる,というのはやや短絡的なのではないかと。何かにコントロールの可能性を与えると,それによって全てがコントロールされてしまう,というロジックはあまりにも無責任じゃないかと思ったりするのですが。だって,そのために選挙なんかを通じて「監視」しようとするわけですから(あまりにも古典的なモデルだとは思うし,そのヴァージョン・アップは必要だろうけど)。
追記:結局のところ名古屋高裁判決は住民敗訴。大阪高裁が住民勝訴ということで割れてるわけだから,まあ最高裁の判断,ということになるんでしょう。どうなることやら。

関連して,住民基本台帳カードの話を少しだけメモ。

住民サービス向上や事務処理削減を目的に導入された住基ネットは、2002年8月の暫定運用開始から既に4年以上が経過した。しかし、住民が住基カードを所持してサービスを受けるメリットは見えにくく、普及率も1%に満たない。

総務省住民基本台帳のネットワーク化により、年金受給者の生存確認がネット上で行われ、年1回受給者が提出する約3100万件の現況届が廃止されることや、行政機関への申請や届け出で住民票の写しの提出が不要になること、引っ越し手続きが転入時の1回で済むことなどの効果を強調する。
12月11日 時事通信

id:sunaharay:20061106/p1で書いた公的個人認証を登録している人は,おそらく住民基本台帳カードを持っている人の部分集合に当たるわけだから,普及率は1%どころか(住基カードは0.72%らしい)0.5%もないんだろう。記事は次のように結んでいる。

住基ネットの運用経費は06年度で139億円。導入には03年度までの5年間で計391億円が費やされている。電子政府の実現や行政効率化など、住基ネットの可能性を認めても、莫大(ばくだい)な費用を考えれば、より質の高い住民サービスの提供が求められている。

まあ確かにこんだけ普及率が低いとね。ただ利便性の話(結局市役所行かないといけない,とか)は,最終的にはこれは地方の事務か?みたいなところに繋がる気がする。結局のところ市区町村レベルの地方政府が発行するカードで,その域内でしか使えないわけだから,多目的化をしたところでたかが知れている。やっぱりもっと広域で使うことができてこそ,だと思ったりするのですがどうなんでしょうか。国会図書館の入館と,自治体の図書館への入館がおんなじカードでできたりするととても便利だと思ったり…(使う人少ないかorz)。いずれにしても,全国的な基盤の上に,各市区町村独自のサービスを載せていく方が好ましいようには思うのですけれども。まあもう遅いか…。