ふるさと納税その後

最近年金の話がヒートアップした後はどちらかというと聞かなくなってきたのですが,これはもう撤収方向ということなんでしょうか。6月30日の段階では,ふるさと納税の導入だ!と気炎を上げていた「ポスト改革派知事」を自認する方々の主張が出されてきたらしい。

ふるさと納税導入で結束=反対派に公開討論呼び掛け−若手5知事
「ポスト改革派知事」として政策グループを旗揚げした宮城、山形、鳥取、徳島、佐賀のいずれも40代の5県知事が30日、地方税収の充実・格差是正などをテーマに東京都内で会議を開き、国に対し結束して「ふるさと納税」導入を求めていく方針を決めた。近く政府に申し入れるとともに、東京など導入に反対している大都市圏の知事らに公開討論の実施を呼び掛けていく。
(中略)
会議後の記者会見で、古川康佐賀県知事は「(ふるさと納税は)行政が一方的に賦課し納める税制ではなく、納税者が選択できる画期的税制だ。地域に興味を持つ人が増える」と、導入による地域活性化効果を指摘した。飯泉嘉門徳島県知事は、大都市圏と地方圏の対立が激化しないよう配慮する必要性を示しつつ、「争点を明らかにし国民を巻き込んだ議論をすることが大事だ」と話した。
6月30日時事通信

なんせ旧自治省出身の若手知事が三人も,ということなのでこれは確信犯的にふるさと納税で地方団体間の水平調整っていう方向なのかなぁ,と思ったりしてたのですが(とはいえ個人住民税なわけですが…),なんだかえらくトーンダウンしたみたいです。これをトーンダウンと受け取るかどうかっていうのは人によるかとは思いますが。

◎「ふるさと納税」は税額控除で=宮城など5県知事が制度案
ふるさと納税制度の導入を目指して結束した宮城、山形、鳥取、徳島、佐賀の5県知事は12日、全国知事会議開催前に熊本市内で会合を開き、同制度の具体案をまとめた。個人が自治体に寄付をした場合、一定の範囲内で全額を税額控除する方式で、控除対象に国税所得税も含めた。近く菅義偉総務相らに提言する。
控除が受けられるのは、本人または家族がかつて住んでいたことがあるなど、何らかのゆかりがある自治体に寄付を行った人。控除の限度額を前年の個人住民税(所得割)の1割相当額とし、所得税から寄付金額の60%分、個人住民税から40%分をそれぞれ控除する。
7月11日時事通信

税理論についてはよくわかりませんが,「地方団体」を特別な寄付の対象にするっていうのは正直ちょっとなぁ,と。「小さな政府」っていうのであれば別に地方団体じゃなくても公的な仕事を担うNPOとかの寄付だって税額控除すればいいわけだし。本来なら国がやるべき公的な仕事をやっている他の団体(=地方団体あるいはNPO?)に対して寄付したものを税額控除するというならわかるのですが,他の地方団体から持ってくるっていうのはやっぱり上手く説明できないんじゃないのかなぁ。この方法で押そうとするのは,地方税制を混乱させるだけではなくて,寄付税制まで混乱させてしまいそうで正直どうかと思う。それだったら交付税の制度を変えるにせよ,分割基準を変えるにせよ,正面から東京の法人二税を寄越せ,と主張する方が正当なのではないだろうか(ってもちろん主張してないわけではないなのでしょうが)。ただ前の分権委員会の増田委員長代理は,法人二税の分割基準を変えて譲与税っぽくなるのは「負担と受益が合わない」という観点から否定的な見解だったわけですが,そもそも論として,法人の負担と受益というのもよくわからない。しかし現実には多くの都道府県で法人に対する超過課税っていうのはなされていることから,法人二税を譲与税のようにすることに対して「法人二税は地方政府が超過課税を実施できる数少ない税源だから」反対というところがあるとすれば,やはり(あくまでも筋としては)どうかと思う。法人は選挙権を持っていないわけで,本来は地方団体ごとに法人に対してバラバラに超過課税をするっていうのは望ましいとはいえないでしょうからねぇ。