広域行政

まあ昔から言われてることですが…。

原子力発電環境整備機構(原環機構)が公募している高レベル放射性廃棄物最終処分施設の建設地調査に、高知県東洋町の田嶋裕起町長が昨年3月、独断で応募書を提出していたことが15日、分かった。町長は「財源が得られると知り応募した。当時は知識が乏しく、軽率だった」と話している。
(中略)
町長は「危険性も含め重大性を認識せず、1人で判断した」と説明。原環機構は同月、町長と面談の上、町民への説明不足を理由に不受理とした。
1月15日 時事通信

この町長は東京原発の見すぎじゃないか?と思わないでもないですが。やはり驚かされるのは,周辺の複数の県にまたがるような意思決定が,非常に小さな町(人口3400人,面積74平方㌔)の町長によって「危険性も含め重大性を認識せず,1人で」行われることにあるわけで。とはいえ,制度設計にもなかなか奇妙なところがあります。というのは,この町長は,施設の設置可能性を既存資料で調べる「文献調査」への応募書を原環機構に出したそうで,この調査は3段階ある調査の第1段階に当たるとのこと。これだけ見ると,いやそら普通のステップやろ?と思わないではないわけですが,時事通信によるとそういうわけでもないらしい。

文献調査に応募すると、国から年間最大2億1000万円(来年度からは約10億円)の交付金が受けられるなどの優遇策がある。財源確保のため、複数の自治体で応募に向けた動きがあるという。

東京原発』をじっくり見た感想を思い出すに,「さすが原子力…」と唸ってしまうところではありますが,それにしても施設の設置可能性を既存資料で調べるだけで億単位のお金を交付するっていうのはまたすさまじい太っ腹っぷりで…。おそらく,原環の判断で最終的に設置が見送られる場合にこの交付金が受けられるのではないか,とは思うのですが,それにしてもはじめから裏切るつもりで申請してきた人にも交付されるっていうのはどうなのだろうか。だんだんやばくなってきたら(通りそうになってきたら)自分で住民運動煽るとかって言うワザを必ずしも排除できないように思うのですが…。
とは思ったのですが,機構のウェブサイトを見る限り,そんなに何個も何個も公募するようなもんじゃなくて,最終的に20年くらいかけて決めて国家単位で数個,みたいな感じらしい(設置数は発見できなかった)。てことは「文献調査」で落ちろ,落ちろ,と思っている首長は相当数いてもおかしくないような…。しかし20年かけて決める,というのは,首長の政権交代リスクがかなりでかくないか?この制度であれば,例えば3期目の首長が4選に出たい,みたいなときに,一時的に財政状況を好転させつつ,原発が実際にできるときにはもういない,っていう話はありうるわけで。途中で原発反対だけを旗印にする対立候補がひっくり返そうとするっていうのはかなりありえそう。