ちょっと変わった小泉論

週末になんとなく,上杉隆[2006]『小泉の勝利 メディアの敗北』草思社,を読んでいたのですが,この本,ほとんど「政策」に興味を示さずに,「政局」的な観点から書かれてるのは面白いですね。ジャーナリストが自分の記事を検証する,という試みもとてもいいと思うし。著者が書いていて「確かに」と思ってしまったのは,自分で足を使って取材したというところは他と比べて確かに面白かったな,というところでしょうか。郵政解散なんかについてもたくさん出ているほかの本には書かれていないような話が出てましたし。特に,前首相が郵政のパンフレットを「全部読みましたか?」って聞かれて「読めるわけないだろ!」って逆切れした話とか,残しておくのは大事なことだと思うわけで。
著者も前首相がいろんな意味で「不世出」の政治家だったらしい,ということを認めていて,自分たちメディアが「敗北した」というところから出発して,これまで落とされてきた(認めてこなかった)ところを拾おうとする姿勢はとても好感が持てます。という僕も,恥ずかしながらこの本を読むまでドミニカ移民の和解の話は知らなかったので何もいえませんが…。ハンセン病とドミニカ移民の話を見ると,やはり小泉首相というのは自らが敢えて責任を引き受ける,ということで支持を拡大させるようなところがあったんじゃないかな,と思ったり。現状と比較するとなかなか示唆的ですが。

小泉の勝利 メディアの敗北

小泉の勝利 メディアの敗北