分権委一次勧告:感想

id:nozomimatsuiさんに振っていただいたので,ぜひ一次勧告についての感想を書きたいところなのですが,僕の観察はまだ第47回までなんで,一次勧告まであと3回もあります…。しかしながらようやく学会報告,学会要旨の準備,査読後の修正などなどに追い立てられた5月が終わり,通常営業モードに復帰できるようなので,来週からは何とかなるのではないかと。とりあえず今週末から大阪に行く新幹線の往復で追いつきたいところ。
とはいえ,せっかくなのでちょっとだけ感想を。一次勧告が行われた49回の動画をチラッと見て,まず思ったのは審議時間が短いなぁ,というところ。もう凄まじい時間審議してたらどうしよう,と思ってたのですが,勧告を作る回も2時間程度だったのは,それはそれでちょっと意外。それこそid:nozomimatsuiさんがまとめてくださっているように,メディアの反応を見ると,これまで分権委を見てきた立場からすると完全に迷走してるなぁと思うところなのですが,実はその原因は,この日の会議がサクっと終わってしまったことにも示されるように,明確な「敵」が存在しないからではないだろうか,と。もちろんマスコミさんにとっては「官僚」は常に「敵」なわけですが,勧告の内容を評価する基準がそこのみになっているのはいかがなものかと。特にそれが現われているのは道路の管理の話。特に毎日新聞この記事なんか典型的ですが,整備・管理を一体的に移譲しようというのが「くせ球」っていうのはよくわからない。なんか「官僚」の意図を過剰に読み込んで,あちらから提案して来るんだからウラがあるだろう,と読みすぎている気がするのですが。整備・管理を分けるほうがよっぽど「くせ球」だし,財源がないないと言ってる中で管理だけ別にしたときに補助金を受けた地方が国の仕事をする,という昔の機関委任事務的な状態になることは気にならないのだろうか。
明確な「敵」がいないっていうのは,報道の人たちにとっては結構深刻なんだろう。しかし,残念なことにもう潰すだけの敵はほとんどいないんじゃないかと思われる。それどころか結局のところどういう選択肢をとってみたところで誰かが泣くことになる。悪いことしてる「敵」だけが泣くような提案なんてもうそもそもできないから「慎重に検討」を謳っているのに(そう謳うしかないのに),それも「先送り」としか表現できないっていうのはどうなんだろうか。必ずしも全ての事情に精通しているわけではない7人の委員(+2人の専門委員)が全てのことをザックリと決めていくなんていうのはいくらなんでも考えにくいと思うわけですが…。
思うに,この手の委員会についてはどうしても昔の第二臨調の面影から離れられないんじゃないだろうか。「めざしの土光さん」を筆頭とした9人の委員が三公社五現業を始めとした政府の負の部分にメスをいれ,行政改革を,増税なき財政再建を「成功」させた(まあバブルと同時だった,という話なのかもしれませんが),という勧善懲悪のストーリーへのノスタルジーというか。ひょっとすると単に政府の中枢とマスコミが以前のようにうまく関係を結べてない(誘導できない?)だけなのかもしれないけど,でも今はバブルじゃないし,残念ながら誰かを喜ばせたら誰かが泣くことになることが多いのが現実なのではないかと。後期高齢者医療制度だって,来年あの制度がもし廃止されたらまた僕ら国保被保険者の負担が上がるわけでしょ…(ほんと,廃止されかつ就職できないとしたらもうご愁傷様というか)。
妙に情緒的な話になってしまったわけですが,こういう風にマスコミさんが「敵」を探して迷走するのは,実は勧告を受ける官僚の側が意外と柔軟な対応を見せているからかもしれない。いやもちろん,分権委の様子を見てるとなんでも「ダメ」と言っているように見えるわけですが,あそこで一生懸命ダメだといっている話で,特に主要なものについては大臣折衝を通じて微妙に柔軟になっているものが多いわけで。道路しかり,最低基準について柔軟な姿勢を見せた福祉関係しかり。そんな中で農地での反対が目立っているわけですが,農地の権限だけ移譲するのはそら反対が出るのも当然のような話で,(また49回のときに書くと思いますが)目玉としては農地関係と都市計画関係を「総合行政」の主体である市が一体的に扱える,というところなはず。「総合行政」のメリットがなくて農地の権限だけ今の市町村(の農業委員会)へ移すような話だとしたら,それこそマスコミさんが批判しないといけないところだと思うんだけど,これはやっぱり「農水省が抵抗」している時点でやるべきことだっていうフィルターをかけることになってるのでしょうかねぇ。