交付税措置

Hatenabarは約一日でアップロード。いやはてなさんも大変ですねぇ。でもまあおかげでまた使えるようになりました。あとはGoogle Toolbarみたいなカスタマイズができるとツールバーのスペースがすっきりできて良いなぁと思ったりするわけですが。
さて,時事通信官庁速報の記事から。ちょっとどうなるのかよくわかりませんが,やや注目。

◎不採算地区の交付税充実も=公立病院の地財措置、重点化検討−総務省
総務省は公立病院に関する従来の地方財政措置を見直し、より重点化する方法を探るため、病院関係者や有識者らで構成する研究会を近く設ける方針だ。ほかに病院がない不採算地区で公立病院や診療所を運営している自治体に対する地財措置の充実を検討する一方、普通交付税の算定方法を実際に利用されている病床数に応じた算定に改めることの是非などについて議論する。
研究会は6月末にも設置。年末までに一定の結論を得て、2009年度以降の地財措置に反映させたい考えだ。
研究会では、公立病院以外に病院のないへき地などの不採算地区や、医師不足をはじめとする深刻な課題を抱えながら小児、産科、救急といった分野で地域医療を懸命に支えている自治体の財政需要をより手厚く捕捉し、普通交付税を充実させることなどを検討する。
一方で、長期間利用されていないベッドも含め、病床数に応じて算定している普通交付税については、実際の病床利用率を反映した算定方法に改めることを検討。また、民間医療機関などに比べて病院の整備費が高くなり過ぎないよう、今後の整備費に関しては普通交付税措置に上限を設けることも議論する。

現在のところ交付税では病床数単位で補正係数が係るんですって。たぶんそれが「病床数に応じて算定している普通交付税」というところで,ベッドひとつあたり50万とかいって批判されたこともあるという話も聞いたことがあるのですが,病院としての効率化よりもとりあえず病床数を残してしまうようなインセンティブを与えてしまう可能性が指摘されているようです。「普通交付税に関する省令」によると,都道府県立病院や市町村立等病院などに,密度補正が充てられているようです。ただ,この省令をご覧になっていただければわかるとおもいますが,密度補正は細かすぎてどうなってるのかよくわからないという問題が…。単純に考えると基準財政需要額って「単位費用」×「測定単位」×「補正係数」で決まるわけで,道府県分で病床数に関連するのは衛生費と言う費目であり,その単位費用が11400円(2007年度)だそうです。補正係数の扱い方が足したり掛けたりしているところがあるのでよくわからないところですが,例の省令に拠れば,

密度補正IIに用いる密度は、都道府県立病院病床数に四三・四二を乗じて得た数を当該都道府県の人口で除して得た数(小数点以下三位未満の端数があるときは、その端数を四捨五入する。以下「都道府県立病院密度」という。)

なので,
「単位費用」×「測定単位」×「補正係数」
=11400 × 人口 × (病床数 × 43.42 ÷ 人口)
=病床数 × 494988
ということなのでしょうか。これが50万の根拠かな。基本的にこの密度補正IIは他の態容補正とかとは独立して決まると考えているので(つまり,掛けるのではなくて足すだけ)これでいいのかと思うのですが,もし態容補正と絡んでいるならこの計算は間違ってることになるかと思います。そのあたりお含み頂きたいところですが…。(すみません,キチンと整理しきるほど時間を掛けるのもちょっと…しかも時間を掛けても僕の能力では理解できるかわかりませんので)
で,まあ話ははじめに考えていたところから大幅に脱線したのですが,戻りまして,これを交付税措置でやるっていうのはどうなんですかね,と。地方分権改革推進委員会でも,西尾代理が「もはや地方自治体は交付税措置なんていう甘い言葉は全く信じていない」ということをおっしゃってるくらいなわけで,総額が変わらないあるいは減る中ではどうしてもどこかに増やすとどこかを減らさなくてはいけない交付税ということでは,病院関係の基準財政需要額が増えても他のところで減らされたり,また,他の自治体にいくはずの(?)交付税を持ってこないといけないわけで。総額が減少傾向にある交付税というのはちょっと怖いもので,自治体間のコモン・プール問題が極めてクローズアップされてくるのではないかと思います。つまり他の自治体に獲られないように,交付税を増やせそうなところは増やすことで自らの防衛をする,と。そして,そういう行動をとる自治体を全く責めることはできないのではないかと思われます。この場合は,普通交付税を充実させようということではじめた医療の厳しい部分を護るための政策が,他の重要な部分の財政資源を間接的に削ってしまうことで,最終的にはなかなかお金が回らずに,交付税を増やすための用意だけに費用がかかって結果的に自らの首を絞めてしまう可能性もあるのではないかと。総額が増える時代であればいいですが,増えない時代の交付税措置というのは,コモン・プール問題のおかげで政策の影響がかなり不確実になってしまうのではないかと思われます。本筋ならきちんとした国庫負担金を出せればいいのでしょうが,その理屈付けも難しい(僻地の病院を半分国営化する?)。国から負担金を出せないのであれば,なんとかして比較的裕福な自治体から厳しい自治体にお金が回ればいいのでしょうけど,税源移譲がこれだけ強調されてる中ではこれもかなりナローパス。うーん,難しい。