副首相

MSN産経より。これが本当なら相当興味深い。

厚労相を副首相に任命へ 政府の「信頼回復」素案明らかに
相次ぐ不祥事で信用が失墜した厚生労働行政を立て直すため、政府は厚生労働相を「副首相」に任命して他の閣僚よりも格上とする方針を固めた。他省庁にまたがる課題でも指導力を発揮できるようにするためだ。24日に明らかになった政府の信頼回復策素案によると、このほかに、現在2人置かれている厚生労働副大臣を閣僚扱いし、実質3人の“大臣”で厚生労働行政を分担。副首相任命は今夏にも実施される内閣改造で実現させる。さらに、各省庁から相当数の職員を厚労省に異動させ、政府総がかりで信頼回復を図る。
厚労行政への信頼回復策は、福田康夫首相が23日の記者会見で表明した社会保障に関する「5つの安心プラン」の1つ。7月に具体策をまとめる。
厚労相を副首相とするのは、厚労行政が多岐にわたり、厚労省だけでは対応できない課題が多いため。副首相は内閣法の法的な位置付けはないが、組閣時に大物政治家などを処遇するための“格上ポスト”として指定されることがある。今回は内閣全体ににらみを利かせ、厚労行政を強化する狙いがある。
さらに、少子高齢化の進行で厚労省の受け持つ業務量の増大に対応するため、厚労副大臣を実質的な厚労相扱いとする。厚労副大臣には閣僚経験などが豊富な大物議員を起用。厚労相のサポートではなく、厚労相との担当分野を明確に分け、副大臣には担当する行政範囲について、国会答弁や予算編成など一切の責任を受け持たせる。
副大臣にどのような担当を割り当てるかは今後調整するが、政府内では「年金記録問題担当」や「社会保険庁担当」などが浮上している。
一方、年金問題などで政府あげての取り組みを求める声が強まっていることから、他省庁から厚労省への大規模異動を進める。これまでの他省庁との交流人事とは異なり、課長級ポストにも積極配属し組織の活性化も図る。さらに、広報体制の強化や、特定ポストを占めている医師や薬剤師などの免許を持つ「技官」の人事も見直す。

普通,「副首相格」で入閣するのは財務大臣が多いと思われるのですが,確かに現在の日本において社会保障行政をまさに一手に引き受けている厚生労働大臣はどう考えても重い。ただし,支出を行う一官庁が支出を締める官庁よりも格上(少なくとも大臣は)として扱われるというのは,支出をコントロールするという意味では若干の問題もあるような気はしますが。
ただ最近の先進国の行政の中心は社会保障なわけで,それを労働分野まで全てひとつの大臣と省に担わせるということ自体,結構驚異的なことかもしれない。まあ日本の場合はむしろ橋本行革のときに厚生省と労働省をくっつけるということをやっているわけですが。逆に例えばイギリスでは社会保障部門がDepartment for Children, Schools and Families,Department for Health,Department for Work and Pensionsの3つに分かれていて,まあ日本で言えば文部省の一部も含めてやっているらしい,と。*1この「信頼回復策」が省庁再編につながるのかどうかはわかりませんが,社会保障部門を強化して,厚労省内に3人の「大臣級」を置くというのはいろいろな意味を持ちうる議論ではないかと。まあ一方で経産省とか農水省をどうするんだ,と思わんでもないところではありますが。
しかし技官の見直しまでいくとすれば,これは結構大きい。技官の場合は他省庁との交流よりも「プロフェッション」として役所の外との交流が重要になってくるのではないかと思われるのですが,そのあたりはどうするんでしょうかね。特に医系技官が制度設計的になかなか難しい存在だということは指摘されているわけで,ここは簡単にはいかないと思われます。「プロフェッション」といってもいきなり臨床に出すわけにはいかないし,「公衆衛生分野」という非常に重要な部門の「プロフェッション」はほとんど厚生省にしかなかったわけで。これからは,医師資格を持たない人も含めた公衆衛生分野の専門家として地方の保健所長との交流とかをしていくこともありうるのかもしれないなぁ,と思ったり。

公務員制度と専門性―技術系行政官の日英比較

公務員制度と専門性―技術系行政官の日英比較

*1:ちなみに,日本の文部省が担当しているような部門としては,他にDepartment for Culture, Media and SportとDepartment for Innovation, Universities and Skillsがあるらしい。