第50回会合(2008/6/26)

節目の第50回会合。かつ第一次勧告から一ヶ月ぶりの会合で,これからは第二次勧告に向けた審議,ということになります。冒頭では,主管大臣である増田総務大臣地方分権改革特命担当大臣)が出席し,一次勧告を出した委員に対する労いと,第二次勧告以降に向けた激励を。その趣旨としては,基本的には委員会の考えの通りにまとめたい,一次勧告後の政府要綱作成のときには直轄事業や農地の問題で意見が分かれたものの大臣間の意見交換で何とかまとめた,今後の出先機関整理については雇用の部分の問題も出てくるので異論も出てくるだろうが頑張ってやっていきたい,というもの。それを受けた大臣と委員の質疑…に行こうとしたら,猪瀬委員が突然「北海道局の官製談合問題はどうか,これをターゲットにすべきではないか」と遮って大臣の意見を求め,大臣からは談合問題とは別に,重複行政の観点から北海道局という組織の問題についての審議はありうるという返答が。で,その後は各委員が自らの所見を簡単にコメント。基本的には各委員がもっとも関心があり,これまで色々なところで述べてきた問題を確認するような感じではなかったかと。最後に増田大臣のコメントとして,今回の第二次分権改革は六団体が一致団結して個別のテーマを推進するという格好ではないが,これは利害の対立もありうる重要な段階になってきたからだ,との見解を披露して終了します。
次に当面の検討体制について,出先機関についての検討は松田専門委員を主査として斎藤専門委員・事務局が中心となるワーキンググループを作って検討しますよ,その報告を受けるのは西尾委員長代理ですよ,というまあ既定方針が示されるとともに,法制的な仕組みの横断的な見直しについては小早川委員が,ということも確認されます。で,ここでの小早川委員のコメントはかなり重要ではないかと。

(義務付け・枠付けについての各省からの回答を受けて)対象法律は537ということであります。まず,この数自体の問題ですが,私自身漠然ともっとあるかな,と思っていたのですが,多いことは多いんですけれども,その辺をどう考えるかという問題があります。最初の委員会で御決定した方針を思い出して欲しいのですが,各省において義務付け・枠付けと認識したものを回答してきている,ということなんですね。ですから,537以外に何か問題があるものがあったとしても,各省において,これは実際に義務付けているものではないという認識をもっているという風に理解するべきものでありまして,この点,ひとつひとつ何があるかということを精査するのは大変なんですけれども,全体としてそういうことであると。そういうルールであるということをみなさまにももう一度思い出して頂きたいし,今後何か議論が出てきたときに,政府として「これはこういう約束であっただろう」とはっきりいえるように,今後も忘れないでいるということが大事だと思います。

太字にしているところ,「各省において義務付け・枠付けと認識したものを回答している」という理解は極めて重要であると思われます。この点は,2007年10月31日の第25回会合で確認されているのですが,これは国が定める事務事業の方を限定列挙するという性格を持つように思われます。この報告を求めたときには「限定」といってもその数は膨大になることが予想されたのですが,これが意外に少ない,と。この時点で「残りの事務で義務付け・枠付けはない」として解釈できないこともないわけで,考えようによってはこの時点で結構分権が進んでしまっているような気もします。まあこれはこれとして,小早川委員からは,この537法律の検討について,事務局に加えて若手研究者を数人加えて議論する,という方向性が示されます。
残りの時間は出先機関についての意見交換。提出された資料4資料5に沿って事務局から説明があり,意見交換が行われるわけですが,ここで出されたのはまず猪瀬委員から,とにかく北海道開発局ケーススタディとして調べるんだ,ということ。猪瀬委員は次回のヒアリングに北海道開発局を呼ぶことを主張し,淡々と次回日程を示した事務局にかなり激高した様子をみせるなど,北海道開発局問題を扱うことが重要だとする姿勢で一貫しています。あとは現地ヒアリングもするべきだ,という指摘がありましたかね。
松田専門委員からは,事務局の資料5(ポンチ絵)に対して,「当該国の出先機関は廃止・縮小」と書いてあるところを捉えて,「縮小はない」という主張を展開します。これはちょっとややこしい話で,かつ一部コメントがマイクから落ちてしまって聞き取れない部分もあるのですが,要するに,

  1. 二重行政が問題になっている出先機関とそうでない出先機関を分ける
  2. 二重行政が問題になっている出先機関については原則廃止
  3. 廃止できない事務があるものについては,
    • 二重行政が問題になっている出先機関同士を統合
    • 二重行政が問題になっていない出先機関に事務を移す

という処理を行うことによって,「(二重行政が問題になっている)出先機関は原則廃止」と言うコメントが出てくるのではないかと思われます。松田専門委員が,WGで出先機関の作業を進めるときに,「二重行政をしている出先機関がこういうものだ」という検討をどこまで進めるかがポイントになる,ということを述べられていたのでこんな整理なのかな,と(つまり1についての検討)。ただこの議論のときに,猪瀬委員が「議会なきところに出先機関はない」という話をしていたので,この点が委員の間でシェアされているのかはちょっとよくわからないところもありますが(ただ,この議論自体かなりこみいっていたので,僕の整理自体あまり自信ありません。その辺りを斟酌してお読みいただければと思います)。
他の意見としては,横尾委員からの県の出先機関にも問題がある,という指摘と,井伊委員からの出先機関(地方厚生局)だけの問題として捉えるのではなくて保険医療制度の問題として捉える視点が不可欠になる部分があるという指摘。まあ両方ともその通りだと思ったのですが,今後の審議でどのように扱われていくのかは注目されてもいいポイントなのではないかと思われます。まあ県の出先機関までツッコミを入れるのはやや難しいところもあるのかもしれませんが…。