第70回会合(2008/12/16)

先日のエントリで取り上げた生活保護データベースは,何となくサクッと釣られたのですが,トラックバックを頂いたid:washitaさんのエントリを見て,そうだよな…データベースになっていないわけがないよなぁ,と思いつつ…。でも,トラバ先に付けられたコメントを見ると「毎年様式や要求してくるデータが微妙に違」うとのこと。また別の筋からは,「社会福祉行政業務報告」のデータは福祉事務所単位で取っているものの,基本的にはひとつのデータベースの中にまとめていないという話も…。トラバを頂いた後は,要はプロセス管理なのかなぁ,と思ってたのですが,実はそうではないのかも…。でもプロセス管理だとしても,そのためのシステムが必要になるわけで,そのシステム投資は自治体負担になるのでしょうか。それはそれなりに大きな費用負担になるような。
さて,もう2009年も2月になってしまいましたが,分権委の観察記録はまだ2008年。例の二次勧告の「二行」のおかげで急遽開催された70回会合になります。何となくこういう糾弾系の議論を見るのは気が進まないのもあって随分遅くなってしまいましたが。
会合ではまず二次勧告についての各所の反応の報告が。閣僚懇談会での総理・総務大臣官房長官による「これから頑張って工程表を作ります」のようなコメントと,知事会・市長会・指定都市市長会の会長談話が報告されます。会長談話は[研究][観察]二次勧告雑感でも触れたように,義務付け・枠付けの見直しは評価する,出先機関の見直しは巨大機関の創設に繋がるおそれがある,というまあ型どおりのコメント。各新聞の社説等も紹介されたようですが,概ね同じ論調で,分権委としてはやや評価が低い扱いと判断して,その原因について少し議論が。多くの委員が分権委の意図があんまり伝わっていない,というコメントをしていた他,露木委員は12月5日に日経がすっぱ抜いた記事で「後退」という論調が知事たちに伝わってしまったのではないか,と。また勧告の作成過程が透明性に欠くきらいがあったことも問題ではないか,という発言も出ていました。
で,そういう議論のあとに,例の「二行」,具体的には第二次勧告4節(35ページ)の

以上を踏まえ、政府に対して具体的な措置を求める事項は、5及び6のとおりである。

という文章の扱いを協議することに。この点について,委員長から「決議」の文案とともに,人員削減の数値目標を入れた4節が,あくまで5節・6節の前提ということであり,一体として考えるべきという委員会の考え方を明確にするべきであるという提案がなされます。そして他の委員からも,数値目標は5・6の具体的な措置の前提になるのだ,ということが改めて強調される,と。
問題になったのはAERAとかでも書いてましたが,猪瀬委員が持ってきた官房長官の記者会見想定問答というやつで,これがまあなかなかよくわからないところ。猪瀬委員によると,官房長官の記者会見における想定問答のペーパーを入手したとのことで,(幸い想定問答は読まれなかった,ということですが)その中で問いに「分権委の二次勧告で将来的に35000人の削減を目指すという数値目標が入っているがどうか」というのがあり,その答えの三番目に「この試算は年度末に作成する工程表の対象となるものではない」と応えることになっているのだ,ということです。猪瀬委員はこのように数値目標を否定するような案文まで作っていることを考えると,混乱の中で入れられた二行には意図があったのではないかと疑わざるを得ない,ということで,この二行と官房長官の想定問答を誰が書いたのか,という議論がしばらく行われます。公開で「犯人探し」をするのもなかなか難しいわけですが,その官房長官の想定問答も結局読み上げられなかったわけで,誰が書いたにしても,事務局が今後委員の考え方に沿って(=数値目標を具体的な措置の前提にして)二次勧告の4・5・6節を一体として考えて進めるのだ,ということで落ち着くことになったようです。数値目標を一生懸命計算してくれたのも事務局であることが強調され,今後はそのように分権委に貢献する事務局として邁進して欲しい,というかたちで一件落着,と。…あまりこの手の話で推測をするのはよくないでしょうけど,全体として調整の結果,というような感じがしないでもないですが,そういういわゆる「官庁文学」による調整が難しくなってきたということを改めて如実に示された,ということではないでしょうか。
その議論のあとは,最近分権委が「政局」に翻弄されがちであることに対する懸念が複数の委員から表明されていました。一次勧告のときの消費者庁道路特定財源(もはや遠い昔のような感じもしますが…)に加えて,最近の公務員改革や定額給付金の話など。ある程度存在感を発揮するためには「政局」に乗る必要もあるのでしょうが,逆に「政局」に乗りすぎると勧告が流されてしまう,というのはなかなか厳しいジレンマのようです。粛々と…,というのはあくまでも理想論なのかもしれませんが。