第67回会合(2008/11/26)

話は前後しますが第67回会合へ。この日は道路・河川の移譲問題を中心とした全国知事会との意見交換と委員間の意見交換,それに義務付け・枠付け見直しの勧告素案についての小早川委員からの報告,となっています。

道路・河川の移譲問題

まず全国知事会との意見交換ですが,出席したのは知事会側での陣頭指揮に当たる京都府知事・佐賀県知事山形県知事の三人。そこで述べられているのは,要するに今後の財源や人材の移譲が不透明であるために国交省との交渉が進まない,という話。交渉の相手が国交省,特に地方整備局なので財源や人員について確たる話ができず,国のほうはどの河川を対象とするかという協議の範囲だけを議論して,地方の方は整備計画をどうするかということを議論しようとするのでそもそも話が噛み合わない,と。これを受けて知事会側からは,今後国による管理を引き継ぐ都道府県の管理が信頼されるような制度的保障を何とか考えて欲しい,という話とともに,それを考えるためにも国交省地方自治体が要求する情報を出して欲しい,ということです。ちなみに「情報」というのはいつも具体的にどういう情報なのかわかりにくいのですが,この日議論されていたのは,例えば国家公務員が直接行っている事務と委託している事務の区分とその執行体制はどのようになっているか,といったようなもので,都道府県が管理を引き継ぐときにどのような体制を取るべきかの検討材料として重要なものを指すようです。特に佐賀県知事から国交省が別に意図的な嫌がらせとして情報開示を遅らせているわけではないという話が出てましたが,それはまあきっとそうなんでしょう。
意見交換では,道路・河川についてどのあたりまで権限移譲を求めるべきか,という議論が主なものだったと思います。その中でもまず整備と維持・管理について,維持・管理であれば基本的には受けることができるけども整備についてはお金がかかるから難しい,と。ひとつの議論として,整備計画ができているところであればお金の手当てが確保できるから移譲の対象としてもいいかもしれない,というものもありました。この議論で難しいところは,整備ではなく維持・管理であれば移譲を受けることができたとしても,維持・管理だけでは移譲される財源が少なくなる,というジレンマです。整備まで受けると言おうとしてもどの程度お金がついてくるかわからないからそこは何ともいえない,というところで,地方の側としては先に権限移譲して後でお金の交渉をするのは怖い,という話だと考えられます。逆に言うと,国の方としても先にお金を差し上げるとは言いにくいところなのでしょうが。
もうひとつの論点は,道路の種類でどこまで移譲を求めるか,というところで,ここで示された基準は(1)高規格道路,(2)人口30万以下の都市を結ぶ道路,のふたつがあります。知事会の側としては少なくとも高規格道路になると維持・管理を含めて移譲を受けるのは難しいだろう,という立場が前提となっているようですが,それを踏まえて委員からは高規格道路以外は移譲を受けるくらいの議論はできないか,という示唆がなされます。背景には,人口30万以下の都市を結ぶ道路の維持管理を移譲しても,出先機関の縮減には届かない,という第64回会合で出た問題があるわけですが,難しいのは一次勧告で「人口30万人以下」という基準を出しているので,今度「高規格道路以外全て」というと一次勧告で分権委自らが出した基準を超えていくのか,という話が出てくるところのようです。まあとりあえず議論の方向としては「人口30万人以下」までで頑張ってみよう,というところですが,分権委・知事会の双方ともにやや手詰まり気味で,何らかのブレイクスルーが欲しいというところで一致してしまう感じでしょうか。
あと目立った話としては,河北新報から猪瀬委員に伝えられたという仙台の出先機関の合同庁舎建設問題が提起され,複数の委員から怒りのコメントが。なんだかなぁ。

義務付け・枠付けの勧告素案

小早川委員からの勧告素案についての説明は,前回委員会の報告のあとに肉付けしたところを中心としたもので,メルクマール該当/非該当の一覧表については次回委員会で諮りたいとのこと。新聞記者の好きな「数」の問題はとりあえず後にしようという感じでしょうか。
意見交換で興味深かったのは,横尾委員の次の問題提起。つまり,自治事務に関する義務付け・枠付けの見直しを進めるのは重要な一歩として,今後は自治事務よりも国の関与が強い法定受託事務の検討という含みを考えるのか,という議論です。小早川委員の回答は,その問題意識は持っているもののやり方については未定で,自治事務法定受託事務という基本的な考え方まで見直すとすると根本的になる,という話。確かにそれは根本的な見直しになるとは思うのですが,それも含めてこの議論には,(1)法定受託事務とされている事務を自治事務にして,そのうえで義務付け・枠付けを見直す,という個別の事務に注目したアプローチと,(2)自治事務法定受託事務に対する国の関与という形式を見直す,という制度全体を考えるアプローチがあり得るのではないかと。いまのところ(1)でいくのかなぁ,と思っていたのですが,(2)を考えるオプションも一応ありうるのかもしれません。
それからに,西尾代理から今後の進め方について義務付け・枠付けについて拾い上げたがやっぱり落ちているのではないかという問題があり,これについての委員会の考え方を示す必要があるのではないかという質問が。小早川委員と事務局の回答としては,義務付けと各省が判断するものを挙げてもらうという調査手法を採っているために,所管省庁のほうで義務付けと判断したものは上がっており,とりあげてないものは省庁から義務付けだと判断されていなかったという整理になるという理解が示されます。西尾代理のポイントは,現実には義務付けと読めるものが検討対象に入っていないことで,そういう法律では実質的に義務付けが継続してしまうのではないかということでしょう。今までの議論で押し通すなら,省庁が義務付け・枠付け調査の段階で出していない時点でそれは「義務付け・枠付けではない」(から自治体が自由にやっていい?)という理解で行くこともひとつの考え方かと思いますが,57回会合のときにも少し問題になった省庁の「後出し」をどう扱っていくのかという悩ましいところに繋がっていくのかなぁ,と思います。