第56回会合(2008/9/1)

だいぶん間が空いてしまいましたが9月1日の会合について。随分遠い前のような気もしますが,実はこの日の会合のあとに福田総理の辞任が発表されたんですよねぇ。だから委員のみなさんはこの時点では当然そんなことは全く考えていないわけで。委員会の中で委員長が「明日総務大臣に会って…」という話があったのですが,2日に総務大臣と会っても結局内閣改造総務大臣も代わったのですが,これからどうなっていくんですかねぇ。
さて内容については,まず関西広域機構(KU)なる組織について,秋山喜久関西広域機構会長(前関経連会長,元関西電力会長)と井戸兵庫県知事が説明。要は中央集権の弊害がさまざまあって,府県レベルの広域連合という受け皿を用意した上で,国の権限を絞り込み,広域行政体として取り組む地方に大幅に権限を移譲してほしいというもの。具体的に広域連合で行う事務としてはできるものからということで,防災や観光,産業振興などからはじめるそうです。で,このKUというのは徳島県三重県福井県鳥取県等も入ってるらしいですが,これらのうち一部の県が回答を保留しつつも,最近「具体的準備を進める段階に移行する」ことに合意した,ということでそんなお話を。秋山会長は関経連の会長職を長く勤めているなどのまあいわゆる「大物」なわけですが,なぜか近畿各県の知事が入ってる機構の「会長」をやってるという大物感なわけで。会合では猪瀬委員の「なんで関空を作ったんだ」的なという話から関空・伊丹・神戸の三空港をうまく活用できていないような広域連合は必要なのかという批判は出ていましたが,まあその辺の議論は機能分担などのお決まりの理屈をつけつつなんとなく流れていくわけで。
次に,国から地方への職員の配置転換・移行について総務省人事・恩給局からの説明が。出先機関の人員を整理するということで,これまでの経験に学ぶというコンセプトだったようです。その「これまでの経験」というのは国鉄の人員整理と最近の農林統計・食糧事務などの配置転換のふたつです。まず国鉄については,国鉄の方が廃止されて,行政機関が人を新しく「採用」するかたちをとったという説明で,採用抑制で隙間を空けつつ採用を進めたと。ただ当時は国の規模・地方の規模が大きく,人員的な余裕があったが今はないという問題があるという指摘が。それに対して最近の雇用調整は内閣府に雇用調整本部を作って農林関係・北海道開発関係を中心に3000人程度の純減を目指しているそうですが,地方機関にいる人が配転対象になることが多く,地方機関から別の地方機関への配転など地方での取り組みが重要になっているそうです。また,国鉄との違いとしては元の職種や年齢層(40-50代)に多様性が少ないために配転に当たって研修の実施などが重要になってくるという説明でした。そのうえで今回の国から地方への配置転換を考えると,職種の変更は少ないものの,自治体ごとに給与体系が違っているという問題や,退職金をどうするかという問題(地方の負担にするわけにはいかない?)という問題があるだろうと。委員の意見としては,配置転換を行う人を個別に選ぶというより一挙に移すということを重視するものが多く,従来のやり方のように個別の希望を聞いてゆっくり進めるのでは難しいとして,分限処分で解雇し、地方で採用することも考えなければいけないのではないか,というかなり強硬な意見も出てました。まあそれはあくまでもひとつの意見としてであって,前提として考えるべきではない,ということは委員長も述べられていたわけですが。いずれにせよ退職金の在り方を含めて「どのように組織を動かすか」が委員会の基本的な問題意識ということになりそうです。あとは組織ごと移すにしても,そのときにスリム化を行うべきかどうかというのは大きな論点になりそうです。
最後は道路・河川の移管についての協議を推進する観点から,財源の取り扱いをどうするかという問題について。要するに,これまで直轄事業とされていたところは道路・河川の新設・改築で2/3の国費が出ていたのに,補助事業に代わると国費が1/2になる,また,直轄から移譲すれば維持管理には国費が出ないというわけで,直轄から権限移譲を行うことによって現状のままでは自治体の負担が増えることが予想され,その問題への対応を検討しようということです。事務局の報告では,なるべく地方税に近い財源がいいとは思うものの,地方税交付税を増やすということでは話がこじれるので*1,現行の補助金に近い形の「交付金」からスタートして,税源に近いものに育てていこうという趣旨のようです。話をややこしくしない,というのはわかるものの,その「交付金」への縛りがどんなもんなのか,また本当に税源に近いものに育つのかは全くわかりませんが。
議論が終わってから,猪瀬委員が事務局や記者を相手に自分が質問することで国交省農水省から出てきた資料を活かせ!と咆えていましたが…。出ているのが貴重な資料であることはその通りだと思うのですが,事務局に高圧的に言うのはモチベーション上どうなのかなぁ,と。そもそも基本的にエリート官僚で構成されている事務局は分権に対するモチベーションを持ちにくいわけで(だからこそ猪瀬委員も苛立つのでしょうが),そこに対して高圧的に接っしたからといってポジティブな効果を産まれるとは考えにくいような。記者についても苛立つのはやはりわかる気はしますが,記者の調査報道能力については別に分権の話だけではないわけで…。ただ内閣もかなり腰砕けで分権の推進力が見当たらない中で,官僚や記者に対してある種の期待を掛けるというのもわかるように思いますが…。

*1:特に河川関係の財源については,今投入されてる国費は基本的に建設公債であり税ではないと。そのために(借金をやめて)税を増やすのかという新たな議論を喚起することになる可能性があるようです。