白書

今週は仕事で環境白書を公害白書の時代からずーっと読んでいるのですが(図書館にない環境白書第一号は除く),なかなかツライっす。環境白書を読んでいて,非常に面白いと思うのは,やっぱり突然浮上した政策課題に対して何とか体制を築いていこう,というかなり大変な努力がはっきりとわかることで。(これはおそらく評価されるべきポイントだと思うけど)5年くらいの短期でほぼ体制整備が完成し,そこで打たれた施策が効果を持っていくにつれて,白書が完全に定型化していく,というプロセスが非常に明瞭なのがまた興味深い。環境白書で言うと,公害健康被害補償法ができた73年にほぼ制度が出揃って,だいたい1975年ころには落ち着いてくるらしい。それは,データの出し方が毎年変わってくるところに端的に出てくる。さらに面白かったのは,当初は環境訴訟や市民運動に対してかなり同情的な筆致で,そういう情報もふんだんに載っているのが,だんだんそういう情報が減ってくる,そして58年度(1983年)の環境白書がまたエライ冷たい扱いで,それ以降は非常に「公定的」な印象が強くなって,環境研究では重要な訴訟であっても全く無視,みたいな書き方になっていく。
環境法の教科書なんかでよく見られるように,「公害対策から自然環境保護へ」っていうのは確かに白書には凄くよく顕れてくる。ただやっぱりあれは環境省アイデンティティとかなり連動してるんだろうな。「公害対策」が一定の効果を挙げてくると,だんだん公害の新しい「フロンティア」を探すのが難しくなってくる。各公害のいわゆる横だし(メニュー増やし)だけでは限界があるし,当初はおそらく住民運動との接近というのも選択肢の一つだったんだろう。しかし結局のところ「自然環境保全」「地球環境問題」の方に舵が切られることになってくる。少なくとも公害対策などと比べてその「成果」は非常に見えにくいし,そのフロンティアが環境庁にとって豊穣だったかは結構疑問が残るけど。個人的にはまじめに白書を読むべきところが減るのは助かるけど…(-;

環境白書〈平成18年版〉

環境白書〈平成18年版〉