カネミ油症救済法案

id:sunaharay:20060924でちょっと触れたカネミ油症の話が,解決に向けて動き出すようです。いまのところ,解決案に対して被害者や関連自治体からの評判は悪くない上に,民主党も乗るらしい,ということで,なんとかまとまりそう,ということらしいです。

自民、公明両党は10日、カネミ油症患者の救済策を検討するプロジェクトチーム(座長・河村建夫自民党政調会長代理)の会合を開き、生存する約1300人の認定患者全員に、1人当たり20万円の一時金を支給することで合意した。また、税引き後の手取り年収額が1000万円未満の患者・遺族について損害賠償仮払金の返還義務を免除する特例法案の骨子も決めた。今後、民主党に共同提案を呼び掛け、今国会での成立を目指す。 
4月10日 時事通信

この事件自体については,日本の環境行政の歴史を調べていたときでもあまり資料や研究論文を見ることができず,経緯については正直よくわからないところも多いのですが,一番のポイントは時事通信の別記事がまとめているここでしょう。

患者らは、カネミ倉庫や国を相手取って起こした損害賠償訴訟で勝訴。国はいったん総額27億円の仮払金を支払った。しかし、その後すべての訴訟で和解が成立して原告が訴えを取り下げたため、国は仮払金の全額返還を請求。一部は返済されたが、2006年末時点でなお約17億円が未返還で、患者らは返済免除を求めていた。

つまり,はじめに食品公害の裁判を起こして,原告が勝ったことによって賠償を得たのに,後に原告が裁判で劣勢にたってしまったことで和解を選択し,その結果として先に勝訴して得た仮払金について,その返還を国が要求したことで,返還できない被害者が困窮した,という話。今回の救済では,一部の原告についてこの仮払金の返還を免除し,加えて認定患者に対して見舞金を支給する,というもの。
というわけで,救済は救済なのですが,どちらかというと食品公害から派生した二次的な問題についての救済,ということなので,そもそもの食品公害についての責任は依然としてはっきりしないまま,ということになるのでしょうかね。被害者の方々が仮払金の返還という悩みから解放されたのは素直に喜ばしいことですが,原因や責任の追求という観点からはまだ先は長いのかな,という印象です。今後発生しうる食品公害や薬害のことを考えると,国や企業の責任が問うことができない,ということならそれはそれでどういう観点から責任を問えないのかを明らかにした上で,補償は補償で実施する,というスキームがあるほうが望ましいように思うのですが。