裁判関係

昨日の発表は準備不足のおかげで久しぶりに我ながらちょっと酷かった…。せっかくの機会だったのでもうちょっと進めたかったんだけども。うーん。でもまあ進んだような気もするし,あんまり進んでない気も。演繹的に考えて検証しましょ,っていうお話はどうしてもはじめに仮説作ってるところでちょっと辛くなってくる。実証見てからやるとなんか新しいことしてる気がしないし,実証見ないでやるとホントかわからないから怖いし。
で,その準備をして数日煮詰まりまくっている間にも世界は進んでいるらしい,ということで,なぜかこの数日に公害関係のニュースがたくさん。
まずカネミ油症のニュースから。以下のソースは全て11月28日の時事通信記事。

カネミ油症の救済法案提出へ=仮払金の返還を免除−与党
自民、公明両党は28日、衆院議員会館で「カネミ油症問題対策プロジェクトチーム」(座長・小杉隆元文相)の会合を開き、被害者の仮払金返還義務を免除する救済法案の骨子をまとめた。自公両党は野党にも協力を呼び掛け、今国会に同法案を議員提出し、成立を目指す。
 救済法案をめぐっては、公明党健康被害調査に協力した被害者に「協力金」名目で医療費を支払うことを盛り込むよう求め、自民党との調整が難航していた。しかし、被害者の高齢化が進んでいることなどから、両党は早期の法案成立を図ることで合意。協力金を含む追加支援策の検討は先送りした。

カネミ油症事件では,一旦は勝訴した原告が国から仮払金(総額27億)を受けたものの,その後の訴訟で和解が成立,原告が訴えを取り下げたために国が仮払金の返還を求め,原告はその返還ができなくて困ってる,ということ。この事件はあんまりきちんとした記録がないので(少なくとも環境白書にはほっとんど出てこない!),経緯はよくわからんのですが,なんで和解して原告が訴えを取り下げたら仮払金の返還になるんだろう。最終的に敗訴した,っていう話でもないのになぁ…と思うのですが。原告勝訴が確定しないとだめ,ということなんでしょうか。
しかし関係ないけど,PT座長が小杉隆。これはいわゆるアイデアの政治,というやつでしょうか。

で,水俣病については二つ。

  • 認定申請棄却を不服とした申請者が,不服審査会に上申した結果,認定棄却取り消しに。しかし再申請しようとしても熊本県の認定審査会が動いてないのでどうしようもない,という話。

興味深いのは,以下のくだり。

不服審査会は27日、緒方さんの異議申し立てについて「疫学的に十分な考慮が払われているとは言い難い」として、棄却処分を取り消した。

水俣病ではあまり疫学の話はしないのではないか?と思ったりしたのですが,不服審査会に行くと疫学の観点から見た因果関係の議論がされるんでしょうか。もしそうだとしたら,そういう話をしない熊本の審査会はややダブルスタンダード,って話になるんじゃないかと。

  • チッソが時効を主張したことについての潮谷知事のコメント。

潮谷知事は「裁判上でまだ和解に触れられてもいない状況で、あれだけ強硬におっしゃるのは、私にもよく分からない」とした上で、裁判外での救済策として検討されている「第二の政治決着」について「(チッソの時効主張が)恐らく影響する。この論法でいえば、どんなことがあっても、チッソは賠償責任には応じないと言っているということ」との考えを示した。
11月28日 時事通信

第二の政治決着…かなり難しいでしょうけど,まあやらざるを得ないというのはイメージができますが。ただ,チッソの姿勢を考えると難しい,というのは想定通りだと思いますが,ここで知事はリーダーシップを発揮できるもんなんでしょうかねぇ。なかなか厳しいところですが。

最後が,東京の大気汚染訴訟。東京都が独自の患者救済案(医療費助成)を出したことに対する患者側と環境省側の反応。

東京大気汚染訴訟の控訴審で、都が東京高裁に患者らの救済措置案を示したことを受け、原告と弁護団は28日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、措置の対象地域が都内全域で所得制限を設けなかった点を評価した。しかし、対象疾病がぜんそくのみで、慢性気管支炎と肺気腫が対象外とされた点を批判した

ぜんそくと自動車排ガスの因果関係は明確ではなく、環境省として疫学調査を実施しているところ。現段階で国が財政支出することは難しい」(環境保健部)

前から少し思ってはいるのだけども,現段階で国が財政支出することは難しい,というのは「環境省として」言ってるのだろうか。それもと財務省が出さないだろうから難しい,ということが言いたいのだろうか。まあ前段に因果関係が明確ではないとかいう理由があるから環境省なのだろうけど。環境省の機関哲学があるとすれば,それは「被害者に対して最大限の救済を行う」ことと「被害者に対して最小限の救済を行う」のどちらを志向するんだろうか。たとえば,「被害者」と組んで財務省と闘うという戦略もありえたりするんではないだろうか,と思うんだけどそれは難しいんでしょうかねぇ。てか,環境省の機関哲学が後者だとしたらなんだかよくわからない省庁になる気が…まあ「地球環境問題」があるんでしょうけど。