石綿一年

石綿健康被害救済法施行から一年。ということで時事通信が現状をまとめた記事を配信してました。

アスベスト石綿)で健康被害を受けた患者や遺族を救済する石綿健康被害救済法(石綿新法)が27日、施行から1年を迎えた。労災補償の対象とならない患者らで、同法に基づき石綿被害を認定されたのは2328人(今月19日時点)に上る。一方、医学的資料の不足などから判定を保留される例も相次いでおり、患者らからは認定基準の緩和を求める声も上がっている。
(中略)
ただ、追加資料が必要などとして環境省が医学的な判定を留保するケースも続出。同省所管の環境再生保全機構のまとめでは、中皮腫では2月末時点で全体の6%(145件)、肺がんでは24%(143件)の申請者が判定を保留された。
患者らは「肺がんの認定基準が厳しい」(石綿対策全国連絡会議)として緩和を主張。また労災補償の対象疾病となっている「石綿肺」なども、同法の救済対象に加えるよう求めているが、同省は「今の時点では(救済の)対象拡大を図るという認識はない」(若林正俊環境相)と早急な同法の見直しには慎重だ。

基本的に労災補償の補完なわけですが。やはり認定のところではもめるというのはまあ予想される話でしょう。環境再生保全機構のウェブサイトを見る限り,中皮腫に関しては特に曝露条件がないようですが,肺がんについては「石綿曝露が原因であるという医学的所見」が必要とされていて,肺がんなので,おそらく特に喫煙者の認定が難しいんじゃないかと思うわけですが。しかし,肺がんになった人たちについて,個別に石綿曝露の影響と喫煙の影響を識別するのはほとんど無理のような気がするのですが。やはりここは公健法のような<制度的割り切り>の考え方が必要なのではないか,と感じてしまうところではあります。たぶん公健法は少なくとも第一種については結構よくできた補償制度だったのだと思いますが,法改正のときに「やめ方」をきちんと詰めずに半ば財政的な理由で押し切ってしまったのが悔やまれるところなのかも。ある程度効果があったことを認めるかたちで制度を改正していれば,それ以降の健康被害補償制度のexit policyも随分立てやすくなってたのではないかなぁ,と思ったりするのですが。
医学的判定の考え方:石綿(アスベスト)健康被害(救済給付の概要)