中国の環境政策

いやこれは将来の序曲なのでしょうか。

【上海・大谷麻由美】中国江蘇省無錫市日系企業「無錫松下電池有限公司」(従業員約5300人)で、重金属のカドミウムによる汚染で従業員に健康被害が出ているという情報がインターネットで広まり、不安を覚えた従業員の職場放棄で一部の工場が生産中断に追い込まれた。同社は12日と16日の2回にわたって自社のホームページに「ネットの情報は事実と全く異なる」と反論した。しかし、中国では外資企業による環境保護の不徹底を批判する声が高まっており、事態の収拾には時間がかかりそうだ。
1月19日 毎日新聞

中国:日系工場で「カドミウム被害」誤情報−−生産中断に
この前のテレビ東京「癌の村の叫び」を見てるとどう考えたって地元企業のほうがキッツイと思うのですが…。日本の公害問題が多発していた時期を調べると,1)住民が健康被害を訴える,2)マスコミが取り上げる,3)選挙に負けるので競って政治家が環境対策をする,というまあなんていうか教科書的な政策競争が効いていることが確認できます。本当は3)の前段階として,「司法が積極的に公害問題で加害者企業の責任認定に向かった」というのが大きいのだとは思うのですが*1
それに対して中国を見ると,1)2)は見られるのですが,やっぱり政治家が環境対策をするインセンティブがないわけで。だって選挙に落ちないし,中央が地方の代表となる官僚を評価する基準は未だにGDP成長率だって信じてる以上,少なくとも国営企業の操業を落とそうとはしないでしょう。まあ比べてみると,ああ,民主主義的っていうのはやっぱり優れた政治制度なんだなぁ,と思うところがあります。
前に「インテリジェンスの業界レポート」を引っ張ってちょっと書いたみたいに(id:sunaharay:20061212:p2)外資系企業に責任を擦り付けてしまおうという戦術が,少なくとも中国人民には受け容れられるかもしれない,という恐怖を記したお話になるのかもしれません。

*1:松野裕[1996]「公害健康被害補償制度成立過程の政治経済分析」『経済論叢』157