多選禁止

総務省の研究会で,多選禁止は憲法に違反するとはいえない,という結論が出るらしい。

首長の3選以上禁止「合憲」、総務省研究会が初の見解
総務省の「首長の多選問題に関する調査研究会」(座長・高橋和之明大教授)が今月末をメドにまとめる報告書の概要が19日、明らかになった。
地方自治体の首長について、3選以上を法的に制限することは、憲法上、許されるとの見解を打ち出す。知事や政令市長に限らず、それ以外の市町村長の多選制限も憲法上、認められるとする。
首長の多選制限は「憲法違反」という説もあり、総務省はこれまで立場を明確にしていなかった。「多選の弊害」が指摘される中、研究会がこうした結論を出すことで、今後、多選制限の法制化や首長の多選自粛の動きが強まる可能性もある。
研究会は、福島県の官製談合事件など多選知事の下で不祥事が続き、多選制限の議論が活発化したのを受けて、合憲性について総務省の見解をまとめるため、菅総務相が昨年12月に設置した。憲法行政法などの学者6人がメンバーだ。
多選制限を巡っては、憲法の「法の下の平等」や「職業選択の自由」などの規定に抵触するとの説がある。
これに対し、報告書は、憲法は「人の権利や自由を保障するために、権力を制限する」という「立憲主義」を基本原理にしていると指摘。「違憲説」の論拠について、〈1〉「法の下の平等」に関しては、首長に何度か就いた人とそうでない人で取り扱いに差異を設けても、立憲主義の観点から合理的に説明できる〈2〉憲法は「職業選択の自由」は保障しているが、選挙で選ばれる首長の職は「職業」にはあたらない〈3〉被選挙権としての立候補の自由は、選挙権から独立した基本的人権として保障されているものではない、と考えることもできる――などとし、多選制限は「必ずしも憲法に違反するとは言えない」との見解を明確にする。
5月20日読売新聞

まあ多選であろうがなかろうが,不祥事を起こす人は起こすのでは…というのは置いといて。
はじめはうむむ,と思いながら見ていたのですが,よく考えたらこの研究会の結論は,多選を制限することは違憲とはいえない,ということだけを言っているわけです。憲法について細かく研究しているわけではないですが,少なくともこの論点に関しては妥当じゃないかな,という印象。まあ職業選択の自由とか言われてもねぇ…って話だし。
どうなんだろ,と思っていたのはその制限のやり方。たぶんここは今回の研究会の議論の焦点にはしてないと思うのですが,中央政府の法律で定めるとなると(あんまりこの言葉は使いたくないものの)やはり「地方自治の本旨」にひっかかるんじゃないか,という気がして仕方がない。首長がある一定以上の任期を務めることができるか,っていうのはまさに団体自治の根幹みたいなところなわけだし,中央政府が,全国一律に多選制限をして,例えば五選なんかを望んでくる住民の意思(そんなものがあるかどうかは知らないですが,設例として)をはじめから制限するというのはちょっと問題があるんじゃないだろうか。いや僕は基本的にはそんなに分権分権言うのは好きではないですが,こういう風な意思決定の問題こそまさに(ほんとにやるなら)分権すべきじゃないだろうか,と思うところで。
もうひとつ。多選がやや難しいところは−条例でやるとむしろこっちが問題になってくると思うのですが−議会が首長に対する不信任を突きつけて,任期途中でやめさせることができるのとどう整合性を取るのか,というところ。まあそもそも論をするといまだって二元代表制でお互いに不信任を出せるっていうのは相互の独立性という観点からどうなんだ,というところがあるわけですが,多選を条例にしたとして,そのときに不信任の制度もどっちでもいいよ,って分権するとホントにぐっちゃぐちゃになってしまうような気がするし。まあひとつの手としては中央のほうでいくつかの類型を提案して,地方の側がそれを選ぶ,というイギリスみたいな方法はありかなぁ,と思わんでもないですが。一律に多選制限してかつ不信任の制度が残る,っていうとなんか全国的に面白いことが起きてしまうような…まあそこは議会のほうのモラールの問題だと理解されてるのかもしれませんが。