脱ダムその後

時事通信の記事より

◎浅川整備計画案に地元市町同意=長野県
長野県は26日、田中康夫前知事がダム建設を中止した浅川(長野市小布施町)について、県が作成した河川整備計画案に対する意見の提出を長野市小布施町から受けた。両市町は計画案の内容に対して「同意する」とし、早急な事業実施を要望した。
浅川治水について、県内で取るべき合意形成手続きはこれでほぼ終了。村井仁知事は「事業全体ではスタートラインであり、実現に向け最大限の努力を続ける」と述べた。
県は今後、計画案を「計画」に格上げし、国土交通省に認可申請するための手続きに入る。国交省への提出は来月になるという。

Policy Terminationで論文を書いた身としてはなかなかどうも…というところではありますが,やはり一度始まった施策は終わりにくい,というひとつの典型例になるのかもしれません。浅川ダムは一度ダム基本計画も作られたダムなので,復活させるのは比較的簡単,ということもあるかもしれませんが。しかしこの引用にあるように「県内で取るべき合意手続きはこれでほぼ終了」ということだとすると,田中前知事が呼び寄せたダムに反対する合意の<外部>というのは一体なんだったのか,というのは気にならざるを得ません。その<外部>が今回の「合意」においてどういう位置を占めたのかを含めて,行政学的に(?)重要な検討課題なのかな,という気はします。
最近ブログの更新頻度が低かったのですが,そういえばこれがありました。

◎猪瀬氏の副知事選任案、可決へ=東京都議会
東京都議会自民党は25日の議員総会で、石原慎太郎都知事が表明している作家の猪瀬直樹氏の副知事選任案について了承することを決めた。民主党も同日の議員総会で了承の方針を決め、公明党も「三役一任」として了承の方向となった。これにより、同案は27日の本会議で可決される見通しとなった。 
石原知事は25日、3会派の議員総会にそれぞれ出席し、猪瀬氏を副知事に選んだ理由を自ら説明した。自民は同日までに、猪瀬氏は国との対応を担い、都の内政にかかわることは現在の都庁出身の3副知事に担当させるなどの条件を知事側に提示している。
(後略)
6月25日時事通信

どうやら副知事就任は規定路線というようですが,微妙な条件がついたようです。それは「猪瀬氏には庁内各局の事業や人事に口を出させないという条件を付け、承認にこぎつけた」というもので(ソースは時事通信・官庁速報),これは都道府県の副知事としてはかなり異例の条件ではないかと。どうやら自民党の都議団から次のような申し入れがあったようです。

(前略)
そこで同党(自民党)は先週知事に、(1)国を含む対外的対応は知事代理を猪瀬氏が担当し、都政の内政面は主に都庁出身副知事に委ねる(2)都政の重要な問題については、猪瀬氏の言動が都の意向に反し、都民の信頼を損なうことのないよう知事に十分な調査をお願いする―と申し入れ。事態を重く見た知事は25日に各会派に、「猪瀬氏は有能な人物。国との折衝をやってもらう」と強調した。
(後略)
6月26日時事通信・官庁速報

やはり浜渦前副知事のように「庁内をひっかきまわす」ことに対する警戒感が強いようですが。しかしこのおかげで猪瀬氏は「国担当」の東京都副知事という側面がさらに強調されることになるわけで,地方分権改革推進委員会の委員としての役割とやや利益相反になってしまうことが懸念されます。とはいえ,税源の再配分を含む「フェアな」地方分権改革が東京都にとっても望ましいということで,完全に相反になるわけではない,ということなのだとは信じたいところですが。氏にとっては若干難しい立場になるようにも思われますが,東京DCも含めてここまで分権推進委員会でコミットしてきた議論があることをわかったうえで東京都(議会)が特に国対応の副知事就任を容認したということは,氏が妙な自制でもしない限りは最終的に地方分権改革を進める梃子になることも期待できるのではないか,というところでしょうか。