地方公務員の人員管理

結局猪瀬委員が主張していた地方公務員の人員管理についての指標は総務省が作るらしい。

◎自治体の定員スリム化へ簡素な新指標=人口・面積基本に−総務省
総務省は、自治体の定員モデルを試算するための指標や計算式を従来より簡素化し、年内に提示する。自治体や住民が、人口などが類似した他団体と職員数を比較し、スリム化に生かせるよう、新指標では人口と面積を基本に据える。これにより、自治体は普通会計全部門の自らの定員モデルを簡単に試算することが可能となる。地方分権の推進には、自治体の行政改革の徹底も必要と判断した。
地方公務員の定員モデルの算出では2004年まで、人口や面積に加え、生活保護者数や農家数など行政需要に密接にかかわる多様な指標を用いてまず行政部門ごとに試算。それを集計し、自治体全体の適正規模の目安を割り出す計算式を使ってきた。しかし、複雑な上、特定分野の行政サービスや行革に力を入れた結果など実態を反映しにくい面があった。
新たに設ける手法では「分かりやすさ」に重点を置き、人口や面積を基本に昼間人口や事業所数、政令指定市の有無(都道府県の場合)など、できるだけ少ない指標を検討。例えば、道府県政令指定都市中核市といった類型ごとに、定員モデルを簡単に試算できるようにする。
(後略)
7月2日時事通信・官庁速報

これを読む限りだと,普通会計ごとの標準的な定員数のようなものを公表していく,ということになるのでしょうか。その場合は病院とか公営企業関係でやっている特別会計ものの人員は含まないわけで,まあそこは妥当なのかな,と。記事の省略した部分によると自治体の職員数を類似団体や隣接団体と比較する,というのがひとつの大きな目的になっていて,それは地方分権改革推進委員会でも議論されているように重要なことだと思われます。ただし,その比較を行ったうえで問題があるところについて責任の所在が明らかにされるなら,ということだと思いますが。また結局のところ危ないっていうことがわからなかった…っていう同じような話だと意味がないわけで,危ないと思ったときに国が介入する責任を持つのか,あるいは「比較して政権を変える」ところまでを含めて住民の自己責任にするのか,というところだと思いますが。
ただ,おおもとの「標準的な定員」については必ずしも疑問がないわけではありません。例えば,生活保護を考えたときに,生活保護を受ける人が多いところ(保護率が高いところ)ではどうしてもそのための要員数が大きくなると考えられます。2005年末にやっていた厚生労働省の研究会でも保護率と失業率や高齢化・離婚率等との相関は高く,経済・雇用情勢や社会的要因は保護率・保護費の上昇や保護率の地域間較差に極めて大きな影響を及ぼしているということについては共通認識が確認されているわけで,経済状況が悪い地域では保護率が上昇し,結果としてそのための要員が必要になることが予想されます。その場合,生活保護事務は法定受託事務として国の基準に従って実施されるわけですから,「要員が足りないから保護事務を行わない」ということは基本的にはできない,と。*1そうすると,個別の団体の意思に関わらず要員が増えていってしまうケースも考えられるわけで,「標準的な定員」との単純な比較にどのくらいの意味があるのかな,と思わないでもありません。まあ「標準的な定員」を出すのに経済変数とかを入れたモデルを作ればいいのかもしれませんが…。

*1:ちなみに,当時の厚生労働省の主張は,(一応社会的要因の影響を認めながらも)要員数が多いところで保護率が高くなるんだ,というもので,その根拠としては実施体制と保護率の相関を挙げてます(この資料の3地方自治体における保護の実施体制や取組状況等について)。相関というだけなら,↑のロジックでも先に保護率の向上があったあとに実施体制がついてくるという意味で相関はありそうなもんなわけで,当時は結構総スカンだったという記憶が…(ちなみにこのときの議事録はこちら