多選禁止?

佐藤福島県前知事の汚職以来,知事が長いと腐敗する,ということでボソボソと多選禁止の話が中川幹事長や片山参院議員幹事長あたりから出されて,多くの知事が「確かに長いのは問題だけども,それは有権者の問題であって,自粛するかどうかの判断だ」という趣旨の反対意見をいくつか出してる,と。直近では3期目が終わる岩手県知事が不出馬を表明して,同じく3期目が終わる福岡県知事が4選出馬を表明する,という感じの反応をしてます(あ,知事会会長選挙で闘った人たちだ!)。で,まあ自民党からは特に知事と政令指定都市市長の多選を制限するべきだから,とりあえず推薦は3選を限度にする,ということで,当の知事会会長がその適応第一号になりそうだ,という話。
そんでもって,総務省もぞろ検討会,ということで。

 菅義偉総務相は14日の閣議後記者会見で、首長の多選制限の是非をめぐり、今月中に有識者検討会を設ける方針を明らかにした。同相は「(職業選択の自由を規定する)憲法上の問題、多選制限に対する考え方、多選を制限する場合の内容など幅広く検討する必要がある」とした上で、「半年ぐらいで方向性を打ち出したい」と述べた。
11月14日 時事通信

まだ見ぬ僕の博論のインプリケーションでは,確かに独任制で非常に強い知事の力が何らかのかたちで監視されなければならないというものになる思うけど,それを多選制限というかたちでやるのは考えものではないだろうか。ただし,複数の知事が議論している「職業選択の自由」って言う反論もあんまりですが…。だいたいそういう問題か?
多選というのはあくまでも選挙によって選ばれたという結果が積み重なっているものであって,それは有権者の選択であることには変わりない。「大統領的」というか,少なくとも対議会の権限としては大統領より強い知事なのだから,アメリカの大統領にもある多選制限を,ということも言われるのかもしれない。しかしそれはあくまでも対議会ということで,日本という単一国家の中のひとつの地方政府をアメリカの大統領と比べるのはいくらなんでも正しい比較とはいえないと思うし,競争的な知事候補(いいタマ)を出せない既存政党の問題を棚上げしすぎじゃないだろうか。もうちょっと言うと,これって県連・県議会と中央の意見がかなり異なってくるんじゃないだろうか?「強いだろう知事」の支援をいちいち3期で取りやめて,そのたびに関係悪くされたらたまったもんじゃないと思うだろうし。
何よりも,政府が続いているという意味では,中央政府なんて55年から93年まで同じ政治権力(政党)がずっと続いていたわけで,そしたら与党(少なくとも国会議員)にも任期を設けなくてもいいのか?なんて思ったりする(これは言い過ぎ感があるが)。たぶんもっと多選がきつい町村長についてはそのままらしいし。だいたい,町村長が良くて知事がだめ,っていうのは,中央にとって知事がだんだん厄介な存在になりつつあるから止めさせよう,っていう感じでちょっと筋が悪すぎるんじゃないか,と思う。
知事の力を監視するのは,各地方政府の内部に独立した司法的機関を作ることができないのであれば,やはり別の正統性を保持していることになっている議会を使うしかないのではないだろうか。個人的には,合併でもうちょっと県の数を減らした上で司法的機関(あくまで行政裁判所みたいなもの)を作るのもありかもしれない,と思いますが。