別にいまやらなくても…とも思いつつ,ちょっと先のインタビューのために,道路公団民営化関係の本をいくつかまとめて読んでみる。しかしこれはまさに羅生門,というか各人がそれぞれにいろんな主張をする上に,情報量が異常に多いので,分析対象としてはかなりキツイものがある。というわけで,以下メモ。
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「民営化」というのは,本来であれば公物である資産を私物化Privatizationすることで,引き受けた会社が私物である資産を効率的に活用して利益を上げることを目的とすると考えられるものであり,「道路公団」を民営化するということは,まさに(高速)道路を言葉の本来の意味で「私物化」するものであったわけで。しかし大嶽先生も書いてるように,「民営化」として,道路を公物のまま公的機関(独立行政法人)が所有し,民間会社はそこから道路を「借りて」運営してこれまでの借金を返し,借金が返し終えた時点で高速道路を無料開放する,と言うプランも「民営化」として扱われてしまったことが,ボタンの掛け違いを生み出すことになった。そもそも2001年8月22日の行革断行評議会で発表された「猪瀬私案」−最終的な「改革」は結局のところこのかたちに極めて近い−を「民営化」と呼ぶところからスタートした時点で,こういう混乱は起こるべくして起こったのかもしれない。
しかし,公物の典型とも考えられる道路を「民営化」するというのはよく考えたらすさまじいプランじゃないかと思う。道路みたいな形態の独占で企業が維持管理を行うインセンティブって働くのか?高速道路が有料で,民間会社が経営している国っていうのは残念ながら詳しく知らないのですが,どのくらいあるものなのでしょうかね。少なくとも2002年当時の日本においては,道路を「私物化」するということ自体,ほとんど観念されてなかったのではないかと思う。僕が記憶する限りのマスコミ報道ではあんまりそういう論点見てなかったし(まあそれは僕が全く理解できていなかったというだけでしょうが)。そういう状況で,田中委員長代理,川本委員という極めて優秀で実際に道路公団の「民営化」を志向した改革案を作成することが可能であった人たちがあのような「民営化委員会」の中に入ってしまったことが悲劇だったのかもしれない。
公物というある種の固定観念が存在することを理由として,道路を私物化Privatizationするような改革ができなかったとしたときに,じゃあ道路建設の効率化をどうやって図るか,というのはやっぱり問題として残る。公物が前提である状況では,建設は建設として国の責任でやって,運営部分のみを民営化する,というか調達を競争にかける,というのが好ましかったのではないかとも思う(実はこの議論をしていたのは古賀誠…)。建設の方は競争入札ではなく,エイジェントをモニタリングするような制度が必要になるが,効率化を促すような評価の仕組みがない(あるいはあっても機能しない)状況では,やっぱりJRのように,全体を私物化して,ちゃんと監視する人たちに評価を任せた方がいいのかもしれない。しかし,いずれにせよ明らかなのは,現状の「民営化」ではどうやったって「株式上場」はないだろーっていうところ。ていうか,そのうちこの話,つまり現在の「民営化」を進行させるというStatus Quoを見直すような時期はまた現れるのだろうか。
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