『都市問題』の論文を拾い読みしているときに参考文献で見つけた本を手に入れて読んでみる。最近いろいろと調べ始めているところなので,頭には入りやすかった。改革案についてはいろいろ議論はあると思うけれども,少なくとも問題点を指摘し,その存在を実証的に明らかにしようとする部分は勉強になる。
日本の医療保険制度と費用負担 (MINERVA社会福祉叢書)
- 作者: 小松秀和
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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第四章は賦課が世帯単位になっている健保の話で,被扶養という制度は健保制度の所得再分配に影響を与えるか,という話。著者の分析では被扶養者のパート収入はそれほど制度を歪ませているわけではない,とするものの,就業調整のような労働供給の阻害の方が問題じゃないか,それを考えると賦課を個人単位にしてもいいのではないか,ということを言っている。なお,労働供給の話は確かに問題だけれども,ここで実証研究をしているわけではないので問題点の指摘に留まっている。で,第五章は老人保健の拠出について分析して,必ずしも保険者が保健事業などを通じて老人一人当たり医療費をコントロールできているわけではないために(保険者機能なんて効かない?),老人一人当たり医療費をコントロールすることで老人保健拠出金を減らすのは難しく,結局のところ義務的負担部分だけで老健拠出金が決まってくるのではないか,というお話。六章は改革案で,保険制度に関しては,基本的には年収に対する賦課率を各保険制度で一元的にするべきだ,という議論が中心ですが,ちょっと興味深かったのは,所得捕捉が上手くいかない農業者や自営業者に対しては保険料定額プラン(自己負担の割合を変える)を導入してはどうか,という話。あんまり考えたことなかったのですが,そういう考え方もあるんだなぁ,と。
こうやって見ると,まさに問題は山積,ということなのでしょうが。筆者が挙げている主なものだけでも,こんな感じ。
おそらくこれらをいっぺんに解決することは出来ないのではないかと思います。だから部分部分を手直ししていくアプローチになるんでしょうが…問題は全体の設計者がいない(というか想定しにくい)中で,最終的に整合性が取れるようなやり方で,つまり「いらんことをしないように」個々の改革を進めることができるか,っていうところあたりにありそうですが。